独:Der Alte würfelt nicht.
  
 
「お人好しを私の部下にした記憶はない。いつか足元掬われるぞ。その娘に刺されるかもな」

「…何て事を言うんだ、物騒だな。この子は被害者だろう…あんな場所に置き去りにされて…」

「おい、もう着くぞ。明日は非番にしておいてやる。感謝しろ」

「…もともと非番だけどな。でも本当に助かったよ、ありがとう」


シャーナス将軍の声に視線を窓の外に向ければ、白い外観の美しい大きな家が見えた。

車のドアを開け、少女の身体を抱えて外へと出る。

適当に挨拶を交わし、これ以上雨に濡れないため自分の家に足を向けた。

白い外観に対照的な黒茶のドア。

近代的な町並みの中にひときわ存在感を持つそれは、冷たい印象を持たせた。

主人が帰ってきたことを認識し、オートロックを解除してくれる。

その音に反応したのか、腕の中で眠る少女が身体を摺り寄せてきた。


――…寒いのだろうか?


ドアを開き、中に入れば外の凍てつく外気と遮断され、生温い暖かさが身体を包み込む。

物体認識センサーが俺を感知したのか、照明をつけ、ドアを開けてくれた。


『設定温度23度から24度へ。手動に切り替える場合は――』


無機質な音声を聞き届け、靴を無造作に脱ぎ捨てては部屋に入る。

雨の所為で低くなった体温を気遣って、部屋の温度が若干高く設定された。

いまだに眠る少女の身体をソファーに横たえ、髪を背でひかないように手繰り寄せながら、白い首筋を露にさせる。

粗雑に置いてある毛布を少女の小さな身体にそっと置けば、安心したように笑みを浮かべ、毛布を握ってまた深い眠りにつく。


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