独:Der Alte würfelt nicht.
「…当分は…そうだな。兎が見つかるまではここに居てくれ。乗りかけた船だ、お前の最良の結果になる様に、俺も協力するよ」
「ありがとうなのです。ところでローズはいつからここに居るのですか?」
「――お前、覚えてないのか?」
「はい…ローズは暗くて狭い所にずっと言ったのです。でも…いつの間にか、こんな綺麗な場所に居たのです」
下手に誘発して思い出させるのは、ローズの体にとっていいのだろうか。
人は耐えられない事実があった場合、無意識でその記憶を遮断してしまうと言う事があるらしい。
もしかしたらローズも、その記憶を失っている可能性が高い。
思い出させる事自体、酷な行動だろうか。
「…そうか。“道端で倒れていたから保護”したんだ。気を失っていたから覚えてないんだろ」
「そうなのですね。ローズはあのまま白兎にも会えずに死んでしまうのかと思っていました」
「そ、んなに危ない状態だったのか?可哀そうに…」
「でも、白兎がずっと一緒に居てくれたので…ローズは平気だったのです」
白兎とはペットかぬいぐるみの何かなのかなのだろうか。
先ほどからずっと口にする白兎は、ローズにとってとても大事なものらしい。
自分の身の安全を確保するより先に、白兎の心配をするなんて…。
とても大切な友達だと思った。