独:Der Alte würfelt nicht.
「――さ、てと。まずは洋服だよな。最近の若い子の好みはよくわからないが…取敢えず手当たり次第取り入れて…」
こんな時、女の同僚が役に立つのだが…小さな女の子を保護しているという噂がたつのは面倒だ。
しかもそれを機に家を訪問して、お節介をかけ、家事掃除を始めたとなると…。
婚約者に逃げられた挙句、日にちもそんなに経っていないのに甲斐性がないと思われるのも癪だ。
勘違いされるのも困るし…泣かれるのはもううんざりだ。
――インナーだけは店で購入するとして…服くらいは調達しとかないと。
身長から服のサイズは大体わかり、オンラインで購入するためページを漁る。
今日中には無理だが、指定すれば翌日の朝までには到着するだろう。
指で操作しつつも、ローズに似合いそうなモノを探すが見つからない所為でイライラしてしまう。
シックなワンピース、花柄のスカート、ファー付きのジャケット。
「…違う。似合わない。ローズには…もっとこう…」
ファッションのページを開いていた際、右下に小さく宛先の事なるリンクが表示される。
そこには“新しい自分を発見できる!”と大きな文字で書かれ、怪しいパッションピンクのバナー。
一瞬ためらったが、そのリンクの先に表示された物に目を奪われる。
これでもかと言うほどにあしらわれた、リボンやフリル。
西洋人形に着せるような古風なものから、服に意味は分からないがキャンディなどをちりばめられているものさえあった。
「――か、…可愛すぎるか?でもローズは…まだ年齢も低いし似合うかも…」
脳内でフリルのちりばめられたワンピースを着ている姿を想像し、くらりと眩暈がした。
今更だが、着ていた服にもたくさんのフリルがあしらわれていたので…ローズも可愛らしいのが好きかも知れない。
俺はそのストア内の商品のどれも切り捨てる事が出来ず、表示された電話番号を記憶した。