独:Der Alte würfelt nicht.
 
 
――ドンドンッドンドンドン!ピンポーン、ポーンポーンッ!ダンダン、ドンドンドンッ!


『…う…うるさいッ…う、ううっ…うるさいうるさいッ…!うぅっ…一人にしてよ、構わないでよッ…!学歴も出生も全部消したじゃない…ッ!!全部捨てたのに、どうしてまだ…ッ私が何をしたって言うのよぉおっ!!!』


耳障りなチャイムの連打と、ドアを叩く乱暴な音に耳を塞ぐ。

体中に響く振動と心臓の音が混じって吐きそうになる。

私は研究施設でメンバーと一緒に頑張ってきただけなのに。

その内の一人がパンドラの一部のシステムをダウンさせて、大規模な被害を巻き起こした。

それを全部私の責任にされて、社会から切り離されて…自分自身の経歴も消したのに。

まだ、許されないのだろうか。


――ピンポーンポーンッドンドンドン、ガンガンッ……キュイィイイイインッッ!!!

『嫌ッ…何…ッ!!うぅうっ、ひいいっ!!』


機械的な音が部屋中に木霊して、僅かに開いたドアの隙間から火花が飛び散る。

まさか扉を切断されるなんて思ってなく、隠れる場所も逃げる所もない私は必死でクッションを抱きしめた。

音が途切れたと思うと、切断していた機械を地面に投げ捨てた音が聞こえる。

新鮮な外気と共に溢れだす太陽の逆光に照らされた人影が、酷い音を立てて倒れた扉を踏みつけて部屋へと足を進める。

幻のように光り輝く姿に、天国からやっと天使様が迎えに来たのだと理解した。


『――まったく、乙女の部屋がこれでは…恋人になる男が泣くぞ?せめて下着は脱衣所で脱ぎなさい、目のやり場に困るだろう』

『あ…貴方は…天使様なの!?私…天国に行けるの!?』

『私はレイ・シャーナス。君を迎えに来た。残念ながら君の待ち望んだ天使様じゃない』

『なら…神様!?凄い凄い!!私神様に出会ったのね!』

『ここは…変な電波が飛んできてるのか?――とりあえず、片づけろ』


指を鳴らす男性の後ろから、防護服に着替えた集団が部屋に押し入ってくる。

それを止める事も出来ず、私は突然現れた神様に目を奪われるしかなかった。

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