独:Der Alte würfelt nicht.
 
 
「ウハウハ…ね。出来る事ならお年を召したオジ様方ではなくて、若くてお顔の整った美男子がいいわ。それか30代中盤のムンムンとした色気を放っている方なら大歓迎なのに」

「ほら、目の前に居るではないか。大人の色気を放ったムンムンと臭うフェロモンをまとう美男子が」

「…男子って年ではないと思うけど。レイは遠慮しておくわ。だってきっと軍の女の子にきゃあきゃあ言われてきっと甲斐性もなさそうだし、それに、えぇと…」

「まったく、なんて事を言うんだ。私は一途だし、甲斐性もある。どうだ、これを機に恋仲になるのも悪くはないと思うが?」


あまりに綺麗な顔で見つめられるものだから、肩に力が入り身を引いてしまう。

茶化すように覗き見て、顔が赤くなるのを楽しんでいるようだった。

それがなんとも悔しく、高潮した頬と反して不貞腐れた態度を取ってしまう。

注ぎ足された紅茶を一気に飲むと、喉の奥に焼けるような痛みが広がる。

耳障りな心音をかき消すように、もう一度ティーカップを音を立てておく。


「は、話を戻しましょう。それで、逆ハ…じゃない。四大名家の方々が私に何の用があるの。確かに私はブランシュ家の人間だけれど、そのうち養子縁組を解消されるわ。これ以上私に干渉する理由は無いはずよ」

「現に私…シャーナス家の人間が接触しているだろう。だから君は私の手中に収めたかった。君がここに居る理由は、私以外の“ハーグリーヴス家”、“ストークス家”そして君の“ブランシュ家”と接触を持ち、監視してほしいのだよ」

「――…なら聞くわ。レイは何のために私に接触してきたの。ここで貴方と言葉を交わす意味を教えて」

「…寂しい事を言うな。君を利用するために呼んだことは確かだが…いや、何でもない。言葉にするのは野暮だな。これを見なさいアリス」

 
据え置かれた端末を覗き込むと、レイが研究資料らしきものを引っ張りだしていた。

権限を求められ、パスワードを入力すると情報がマルチメディアに展開する。

目で追うより先に次へと進み、全ての内容を理解する事が出来なかった。

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