独:Der Alte würfelt nicht.


『関係者以外立ち入り禁止』

銀色の厚みのある扉には、他の者を寄せ付けないように書かれた文字が目立つ。

厳密にいえば毒・劇物を取り扱う薬品庫と言う話なのだが。

一部の免許の持った講師だけが出入りを許され、一般生徒は立ち入りが禁止されている。

扉の横にはIDを照合させる機械があり、そこに手首をかざせば、案の定『エラー』の文字。

持ち出したノート型端末を取り出し、照合用の機械にケーブルをつなげて中身を見てみる。


 ――ふむむ…学園側が許可した個人の特定IDとパスワードが必要、か。今から私のIDを認証させる作業をすると、動きがあるから此処で作業している事見つかるかな…。パスワードは何とかなるとしても、私のIDでは開く権限が与えられない事も実証済みだし…。


ノート型端末を床に置き、私も座りこんで画面に集中する。

照合者の履歴らしきものを発見するが、暗号化されていて読めない。

取敢えず履歴の暗号を解析させている間、他にいじれる物がないかと探す。

特にめぼしい物も見つからなかった時、解析が終わった事を端末のアニメーションが教えてくれた。

――えぇと…前回の照合者は…げ、リザさんかぁ…。以前の履歴は…うわ、誰?どうにか入ろうと頑張った人がいる…3回試した後、警告がメインに飛んでるし…。きっと警備員に駆け付けられて怒られたんだろうなぁ…。


無駄な努力に心の中で敬礼し、いつも照合に使う右手首のIDとは逆の左手を、ノート型端末の赤外線部分に当てる。

液晶に認証完了という表示が現れ、IDの内部の情報が表示される。

IDの中身には今までの出生学歴、持病や犯罪歴など多種多様なものが記録されているものだ。

しかし私の左手首に埋められたIDは、中身が空なのである。

IDの中身は保護がかけられ、読み取ることは日常で出来るが、書き込むことは国の機関が取り締まっている。

学歴などはすべて国に申請されたものであるから、一年に一度の更新を受けるだけで書き換えは完了する。



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