独:Der Alte würfelt nicht.

 
「――狙撃班!校舎に人影が見えたら即座に射殺しろ!」


厳つい射撃用の銃を持った軍人達が、横一列に並んで照準を合わせる。

その様子を確認し、『アリス』に連絡が取れなくった携帯を軍服から取り出す。

表示された『圏外』はまるでアリスが私の存在を避けている象徴のように感じてならない。

ウィリアムには悪いが、アリスの憂いになる物は早急に排除させてもらう。


「――これが終わったら、ローズの事をちゃんと説明してくれるんだろうな!?」

「…さっきから五月蠅いぞ。仕事に私情を持ち込むな。私に余計な労力を使わせないでくれ…。それにこの前婚約者に逃げられたばかりだろう。もう違う女の尻を追い回してるのか」

「エ、エリザの事は関係ないだろ!?それにローズの事はそんな目で見ていない!」

「五月蠅いと言っているだろう。此処は託児所じゃない、職場だ。泣き叫んで邪魔をするなら…家に帰って寝てなさい」


ケーキやらクッキーやらスコーンやら焼いてくるのは止めてくれよと念を押す。

血糖値の高い私への悪意ある行動なのかは知らないが…、出来ればケーキやクッキーは可愛い女の子に焼いてほしい。

恥じらいながら女子に渡されれば、苦手な甘い菓子も喉を通るというものだ。

それを野郎から貰うなど…私のプライドに反する。

しかしアリスがこいつの菓子を気にいってしまい、最近は甘んじて頂戴してしまっていた。


「シャーナス准将。本日学園に出入りした人間のリストが出ました。目を通されますか?」

「…ん、生徒だけでざっと3000人強か…来客も合わせると――う、吐き気がしてきた。おい、仕事だ、ストークス中佐。これ全てに目を通せ、要人の親族がいる教室は塵一つ舞わせてはいけないからな」

「いや、さすがにこの人数は…俺だって他に何か役立つ事を――」

「それは後々役立つ。最先端のセキュリティを持つパンドラ第一エリア高等学部にテロが勃発した。軍事責任を問われた場合に、このエリアは私の担当だから面倒な事になるに違いない。せっかく築きあげた名家との関係にひびが入るのは勘弁だ」




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