独:Der Alte würfelt nicht.
「…全104話って長すぎるよねぇ…。しかも今から兄妹の派閥争いの果てに、実は子供が出来てて暗殺対象になるなんて。最後にどうやってハッピーエンドに向かわせるのかなぁ…」
シオンのお勧めで見始めたんだけど、かなりの人間味がさらされるドロドロドラマ。
昼間の奥さまたちの時間に放送されている物で、プレミアムBOXまで購入しているらしい。
この前も同じようなドラマを見て、全編解説できるほどハマりにハマったけど、ある日突然ゴミ箱に収集品を投げ込まれているのを見た。
熱っされやすく冷めやすい性格だけれど、私とはずっと仲良くしてくれている。
それがとっても誇らしくて…嬉しかった。
――コンコン。
扉を叩く音にハッとして、私の部屋の前を映している監視カメラの映像を見た。
同年代の青年が私の個室の扉の前に立って、中から返事があるのを待っているようだ。
武器は持ってないみたいだし、一般生徒の一人だろうか。
こんな混乱した状況下、何が起こるか分からないので、片手に鞄を構えていつでも応戦できるように準備した。
警戒しながら、扉を手動で開ける。
「――Guten Tag!…って、うわっ痛ッたいなぁあ!」
「…チッ仕留め損ねたか」
「女の子が言うセリフじゃないよね、ソレ。えーっと、取敢えず中に入れてくれない?」
「嫌よ。見ず知らずの男をこんな個室の中に入れる女は、馬鹿女と相場が決まってるの」
ふむふむと、わざとらしく顎に指を添えて考え込んだ仕草をする。
見た目は爽やかな青年で、深いブラウンの髪が揺れて中世的な印象さえも持たせた。
淡いエメラルドの瞳を細めて、私の姿を一瞥する男性。
普通の子ならくらくら~ってくるのだろうけど、私には逆に胡散くさくてならない。