独:Der Alte würfelt nicht.
「だかさ、僕に協力してよ。アリスを手助けすれば紫苑ちゃんだって怪我しない。実は――さっきまでアリスの居場所は監視カメラの映像で大体の位置は把握できてたんだけど…急に映らなくなったんだよね」
「シオンと行動してるからだと思う。カメラの映り込まない位置を割り出して、校舎を歩けるの。私もちょっとだけいじったけど…シオンは…この学園で知能がずば抜けて高いの。首席だし」
「凄いね。…その特技を、どういう用途で使用してるかは分からないけど…ね」
「そこはプライベートだからね。聞いても答えてあげなーい」
肩をすくめるカノンに背を向けて、苦虫を噛み潰したように顔を歪めてやった。
爽やかな好青年なんて、胡散臭いし腹に一物や二、三物抱えてるに違いない。
しかもアリスを助けたいなんて言うのなら、今回のテロリズムに何かしら関係しているのだろう。
わざわざ巻き込まれる原因を作る必要も無いので関わらないようにしたいけど…。
彼は遠回しに…シオンを人質にして…アリスも助けようとしているのだ。
「とりあえず場所変えよォか。ここじゃ…いつ人が来るか分からないし。騒がしいもん。視聴覚室なんてどう?あそこは新設工事中だからまだ監視外だもん」
「そこまではどうやっていくんだい?監視カメラがあるから下手に動くとテロリスト側に察知されない?」
「へーき。本職だから。アリスみたいにログ残したりもしないもん。とりあえず、軍情報の方が気になるから。殲滅時にちゃんと教室に戻っておかないと危ないからねぇ…」
「そうだね。なら行こうか。二人のお姫様救いに、さ」
手の平を差し出されて、友好の証に握手を求められる。
しかしその手を払い除け、必要な器具を学生鞄に乱雑に詰め込んだ。
データディスクに、フェアリーシリーズに関する資料がぐしゃりと音を立てるが御愛嬌と言う所。
苦笑いするカノンに悪態をつきながら、新設工事が行われている視聴覚室へと向かう。