独:Der Alte würfelt nicht.
――ブ、ブ…ブブブブ…。
シオンの制服のポケットから、バイブの低い振動音が響く。
彼女もそれに気づいたのか、私の腕を握っていた手を解いて携帯を取り出した。
シオンは携帯の液晶を見ると、ほんの数秒眉を潜める。
「どうしたの?」
「…ぷりてぃファンキー春の新作。星のキラめきYellow magic Lip stick。蜂蜜配合で唇ぷるぷるになっちゃうぞ♪私の唇を奪い取ってダーリンシリーズ☆今なら超特価20%OFF!」
「そのダイレクトメール…私も昨日来たわ。受信拒否にしたけど」
「何で新作なのに安くする意味が分からない」
「倒産するんじゃないの?」
「だから最後の最後に収益を上げようと…深いな」
私がテロリストの立場だったら、学園の中枢制御室…メインルームを拠点にするだろう。
その仮定をより強固にするように、メインルームの監視カメラが破壊され、以前の映像が消去されていた。
中央制御室には24時間の警備体制があるので、確実にバックアップデータが存在する。
そこまで周到に削除されていたのでは、まるでその場所に居ますと言わんばかりだ。
「多分、テロリストたちはメインルームに居ると思うわ。どうにかして無力化出来れば…後は軍に任せられるのに――!」
「ふーん。なら決まり、ふふ、やっぱりこういう展開を期待してたの!ハレルヤな気分で、ずばーんと進もう!ほらアリス、突っ立ってないで走るの!!あはは、ごーとぅーざヘベーン!!」
「ちょ…っとぉっ!シオン!!行くって…どこに!?」
「メインルームへ殴り込み!!」