独:Der Alte würfelt nicht.
『――ぴんぽんぱんぽーん!ハァイ!皆サマ!人質になってハラハラドキドキの体験はどうですか!?全世界同時配信の生放送でスリル満点!今から、アリス・ブランシュさんに試験を受けて貰イマス!』
「…あれ、監視カメラの映像に変なのが…何これ、投票数…?」
「――個人の端末に表示されてるみたいだね…このアナウンスも、犯行声明の時とは違う人間みたいだ」
『彼女は転入当時からずうっと試験の点数を777点になるように調整している秀才です!補習者が続出する試験をこれほど舐めてかかっ…――いえいえ!すばらしい知性に感服です!』
強制遮断されていた電気が普及し、視聴覚室に設置済みの真新しい端末にも電源がついた。
改装中の視聴覚室にまで電気を通したとなると、此処に居る事がテロリスト側にばれているのでないかという不安に襲われる。
その事実を明白にするように、監視カメラに映っている誰もいない部屋には明かりは付けられていなかった。
まるで歓迎をするように、私の端末にまで同じ映像を送ってきている。
『今回、そんなアリスちゃんに一つ試験を出そうと思います!内容は実技です!小学生程度の知識を持っていれば、本当に簡単!さて彼女は、見事に正解できるでしょうか!?』
「アリスと…シオン?それにここはメインルーム内の映像…監視カメラは壊されていたとばっかり思ってたのにィ!しかも、私のキューティな端末に侵入するなんてぇ!!」
「落ち付いてよルカちゃん。逆に乗っ取ることは出来ない?」
「無理。見てよ、OFFボタン押しても切れないし。操作も出来ないもん。お手上げ。誰よォ…悪質なハッキングまがいの事してる奴…ッ!」
シオンとアリスがいる部屋は、この学園のシステムを統括するメインルームらしい。
たしかメインルームの映像は監視カメラが壊されているらしく、見る事が出来なかった筈なのに。
映像の隣に表示された、お粗末な“ボタン”を選択する為だけに決定キーと十キーだけは動かすことができた。
“男の子”と“女の子”と表示されたボタンをクリックすれば、投票数がリアルタイムで増える。
乗っ取られた端末を乱暴に叩き、その行く末がマシな物だと願うしかなかった。