独:Der Alte würfelt nicht.
「い、やよ。嫌ッきっと私はレイの後釜になんてなれないし、私は…レイの事をパパ何て呼びたくないわ!断固拒否よッ嫌、絶ェッ対に嫌ッ!!」
「…そ、こまで…嫌がらなくても…。今、本当に…胸が痛んだぞ…。嗚呼、心臓がチクリ、チクリと…縫いつけられるような気分だ…」
「違ッ…そうじゃなくて…!レイの事は嫌いではないのよ?ただ…パパって呼びたくないだけで…その、だから…ッ!」
「まぁ…いい。その話はまだ仮定の一つでしかない。だがその未来に断定するかもしれないという意味で、話す事にした」
口元だけに笑みを浮かべるレイだったが、どこか残念そうに微笑む。
レイには悪いが、そんなこと実現しては私の人生設計丸つぶれだ。
私は彼に出会った瞬間、運命という言葉を心の底から祝福をした。
あの黴臭い部屋に太陽の光を運んでくれて、開く事の忘れた窓を開けたのはレイだった。
風の匂いが部屋いっぱいに充満して、自分の息遣いも、電子機器の音も全部かき消される。
あまりにキラキラ輝いていた所為で、天使様が私を迎えに来たのかと本気で信じたのに。
「レイの娘になる未来なんて来ないわ。…あくまで私の意見が尊重される場の話だけれど」
「…娘、は駄目か。ならば…私に向かってバージンロードを歩いてみるか?」
「バ、ババ…バージンロード…!そんな、冗談ばっかり…」
「冗談ではないのだがな。最終的には君の判断に任せる。もし貰い手が無かったら、私が君の嫁ぎ先にでもなってやろう。だから最後には、必ず私の傍に戻ってきなさい。おいでアリス」
たくましい両腕を広げ、口端を軽くあげたレイ。
顔から火が出そうなほど頬が熱く、終いには涙さえもうっすら浮かんでしまった。
あまりの急な幸せの速達便は、確実に私の心に届く。
私はレイに言われたとおりに前に進むと、その腕いっぱいに抱きしめられた。