独:Der Alte würfelt nicht.
「えぇと…青だよね。そうだ、空を映した綺麗な青…」
「…残念…不正解…」
瞼を開くと、食い入るように見つめるカノンの瞳には…私の顔が映っている。
その叡智のエメラルドに、私のアメジストの瞳はどんな風に映っているのか知りたくなった。
私に好意をいつも囁く癖に、人の瞳の色すら分かっていないなんて…可笑しくて笑える。
きっと金髪の女の子だったら誰だって…私と勘違いするに決まってるんだ。
「…ばか。…よく人の事、好き…だなんて言えたものね…。人…見えてない癖に…」
「見えてるよ。詳しくは見ないだけでさ、見えてる。でも全部同じに見えるから…よくわからなくなるんだ。だって…みんな同じようなものだろ?」
「…えぇ…そう、同じ…。でも…私の事、少しは見分けやすくなったでしょう…?」
「アリスの事は分かるよ。瞳の色が何だって関係ない。分かるから、別に知らなくてもいいんだ」
カノン君が抉られた腹部に指を這わせて、血の噴き出るそこを広げる様に指を差し入れる。
内臓を弄られるような激痛に意識を飛ばしかけるが、クロスさせて穴に無理やり指を突っ込まれた。
声にならない悲鳴を上げた後、何かが引き抜かれていく感覚に髪を振り乱す。
勢いよく抜きさった鉛玉を私に見せ、滴る血液にそっと舌を這わせる。
私の血の染みが彼の舌に広がっていく様子をぼんやりと見つめ、瞼を閉じた。