独:Der Alte würfelt nicht.
「まぁストークスは面倒なことが多いし…俺はドロンした口だからな。派閥争いもあるし、シャーナスが乱入してきた所為でごたついてんだよ」
「…何時からそんな大人な考えを持つようになりましたの、ウィリアム。可愛くないですわよ」
「俺がいつ可愛かったんだよ…」
「事実ですわ。本当に…可愛げ無い」
納得できない、と可愛らしく頬を膨らませたリゼルに苦笑いする。
いつもは高嶺の花を気取っている彼女は、俺にしかこういう表情を見せない。
悩ましげにため息をついて、俺の唇にトンと指を置いた。
「ウィリアムは…恋する乙女みたいな顔をしてますわ」
「…はぁ?」
「ローズって、誰ですの?シャーナス将軍に詰め寄っていたではありませんか」
「だ…だから言っただろう。俺が保護してる娘の名前だって」
彼女の口からその名前を聞くと思わず、顔が引き攣る。
俺の動揺を彼女は読み取り、いつになく綺麗な微笑みを浮かべて赤い唇を横に引く。
言い訳めいた俺の口調に、リゼルの視線はどんどん冷やかになっていくのがわかった。
艶やかな黒髪を指先で遊びながら、柔らかそうな唇をツンと尖がらせる。