独:Der Alte würfelt nicht.
 
 
「――まさかッ!!」

「ちょ、ちょっとウィリアム!どこに行きますの!!まだ軍務途中ですわよ!?」

「今から有給だッ!書類は後で申請するから、後始末頼んだぞ!」

「え、待ちなさいッ!」


リゼルの言葉を振り切って、仮設治療所を勢いよく飛び出す。

部下に調べなければいけないことがあるといい、軍の車を借りて走り出した。


 ――これほど早急に決まるとすれば、…それはローズの記憶が戻った可能性が高い。

自分に関係がない、巻き込まれてはいけないと、分かってはいるが…。

この事件の真相を、行く末を見届けたい。

ローズが引きちぎられた男の首を持っていた理由と、なぜその男は死ぬことになったのか。

…ローズと、どう関係していたのか、…知りたい。

確信があるのだ。


 ――ローズは、殺人なんて犯す腐った人間じゃないってことくらいな!


「早く、早くしろ!!」


緊急用の速度上昇ボタンを連打するが、テロのために通行禁止となっていたため、渋滞になっている。

そのため、どれだけ速度上昇ボタンを押しても、危険回避システムが働いて一定速度しか出ない。

道がなければ、進みようがない、当たり前のことだが、それすらにも苛つく。


 ――落ち着け、冷静になれ。


もう感情的にならない、理性に従うと決めたはずなのに。

冷酷に残虐に、そしてどんな状況下においても理性を捨てるな。

軍人として、理性に反する行動は死を意味すると思え。

任務を感情のままに突っ走り、シャーナス将軍にただ一言、言われた言葉を思い出した。
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