独:Der Alte würfelt nicht.
 
 
「――…ならいいです。お手間を取らせてしまって申し訳ありませんでし――…なんて言うかぁ!!」

「お、お待ちください!!」


厳重に封鎖されていた強化ガラス製の扉が、他の看護士さんが出てきたことによって開くのを見逃さない。

閉まる寸前に滑り込み、受付から脱出した。


「悪いな!あとでいくらでも謝罪文送ってやるから、今回だけ見逃してくれよ!」

「ま、待ってください!病院は走ってはいけません!!」

「突っ込む所はそこかァああッ!」


看護師が後ろから追ってくるのは分かったが、振り向く事無く走り抜けた。

走りにくい軍服で院内を歩きまわるのは、あまりに目立ってしまう。

馬鹿丸出しで走り続けていると、上半身裸の集団に会う。

それを通り過ぎ、縦横無尽に走り回ってローズの姿を探した…が。


 ――迷った。


「くそ、地図くらい置いてないもんかねぇ」


病室を通り過ぎるが、未だに自分がどこにいるか把握できない。

というか、さっきから男の姿だけしか目に入らないとみると…ここは男しかいない階のようだった。


ぶつぶつ壁に向かって話しかけている人や、いかにも普通そうに見える人。

床に座り込んでコーヒーを飲んでいる中年男や、ドアの隙間からチェスをしている人間もいる。
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