独:Der Alte würfelt nicht.
「久し振り、エリザ。元気にしていたか?ちゃんと睡眠はとれてる?」
「…えぇ、平気よ。シャーナス准将の下についていた時よりは、快適ね。ところで、何故ここに?入院しに来たわけではなさそうだけど」
「今日、この病棟にきたふわふわした可愛い女の子――ローズを知らないか!?」
「ローズ?あぁ…オリジナルの…いえ、あの可愛い子ね。私の所にいるわ、知り合いだったの?」
「一日だけだが俺が保護していたんだ。明日、警察に引き渡されるって聞いたから、一目会おうと思ってな」
エリザの話からすると、ローズの事を知っているようだった。
どうにか取り次いでくれないかと頼もうとしたとき、彼女はまた困惑した表情を浮かべる。
何かを考えたあと、自分の疑問をまとめて、俺に尋ねてきた。
「警察…何の話かしら?」
「え…ッ何の話って!事件に巻き込まれて、その為の重要参考人として警察に引き渡されるのが明日だって聞いて飛んできたんだ!…何も知らないのか?」
「初耳よ、そんな事。貴方が軍関係の人間だからいうけれど…、個人情報の守秘義務はあるから他言は無用ね?あの子は、軍から臨床実験の為に連れられてこられたのよ」
「…は」
「立ち話もなんだから…本人に合わせてあげるわ」
白衣を翻して、俺をエレベーターに通すエリザの後ろに続いた。
後に続こうとする研究員をエリザが顎を使って散らし、二人だけで乗り込む。
エリザはエレベーターにカードを通し、暗証番号のようなものを入力していた。
ギアが入れ替わるような音がして、俺たちを上へと運ぶ。