独:Der Alte würfelt nicht.
「――…っさっきから…人の…一大決心無視しやがって…ッ!!いい加減にしろよ!?俺が、お前にとって信用に足る人間だと証明してやるッ!!アリスと白兎を五体満足でお前の前に引っ張ってきてやるよ!!その日に今日の事絶対謝罪させてやるからなッ!!」
「でも…ッウィル…ローズはッ!!」
「もう何を言うな。白兎を探して此処まで来るなんて、お前の方が“アリス”みたいだ。なら俺は…三月兎にでもなってやる。そうだったら…帽子屋からお前を守ってやれるし、ずっとお前とお茶会が出来る。俺をお前の兎にしてくれ、そしたらもう迷わないだろ」
「でも…ローズはそんな事望んでなんか――ッ」
――パチパチパチ。
場違いな拍手にハッとして、入り口に凭れながら俺達を賞賛する男の姿。
血に濡れていた軍服を脱ぎ、ラフなスーツに着替えたシャーナス将軍が居た。
嘲笑う低い声に、ローズが体を震わせてあからさまに怯える。
俺の後ろに隠れ軍服の布を固く握りしめ、時が過ぎるのを必死で待ち続けていた。
「さすがだなウィリアム。年端のいかない娘にペットにして下さいと申し出たか。君にはいつも驚かされてばかりだよ。ところで今からお前に交渉を持ちかけたいのだが…おっと、そんなに身構えるな。別に悪いようにはしない」
「…お前の目的は一体何だ。答え次第によっては俺は手を貸さないし。今後のローズに危害でも加えてみろ、ストークス上層部を動かしてやる。そしたら…軍には居られなくなるぞ」
「おお、怖い。私情で軍を私物化するか…せめて退職金は貰いたいな。私は平和的に行きたいのだよ。いいから話を聞きなさい、少し長くなる。その娘がやらかした…“先日の事件“に関してもな」
「あれは…お前が仕組んだものだろ!!ローズがあんな…残酷な事出来るわけない。お前が…抱え込んでるアリスって女が起こした“アノ事件”のほうが何倍も――ッ」
俺が言葉の続きを言い放とうとした時、シャーナス将軍は俺に向かって指を差す。
予想外の行動に俺はたじろいだが、淀んだ目が透かし見るのは後ろに隠れたローズ。
その指に操られるように、ローズはシャーナス将軍の前に姿を現した。
スカートの端をつまみ上げ、膝を曲げて丁寧にお辞儀する。