独:Der Alte würfelt nicht.
 
 
「――…約束しろよ…ッローズの事件の真相を俺に教えろ!!この条件を飲むって言うんなら…ッいくらだって話してやるよッ!!」

「ほう、言うようになったな。ウィリアムが私に交渉を持ちかけるなど」

「それほどの価値があるんだよッ…!!お前みたいな部外者が立ち居って、興味本位に憶測される筈の内容じゃないんだ!!それを…俺は…話す。この条件だけは…飲め」

「ふむ、いいだろう。私も全てを語る。さぁ早く語れ、お前は何のために継承権をドブに捨てたんだ?ほら、ほらほら、早く話せ…焦らすな…早く私を愉快にしてくれ!」


ゲラゲラと声をあげて下品に笑うシャーナス将軍は、死肉を漁るハイエナの様だ。

人の醜い部分を腹の底から舐めまわすように視姦し、泣いて懇願しても凌辱し続ける。

晒したくない部分を見られるのは、不愉快極まりないのに――この小さな体を守る方法はこれだけだと言う事を俺は知っている。

握られた手の平が温かい、俺に向かって何度も首を振るローズが…“彼女”の様に愛しくて仕方なかった。


「やめてくださいウィル!話したくないのでしょう!?ローズの為に嫌なことしないでくださいッ!ローズは平気なのです、此処にずっといても大丈夫だから…ッ!!」

「…ローズ。帰ったらさ、マシュマロ入りのミルクティー淹れてやる。だから…今だけ耳を塞いでいてもいいか…?お前は頭がいいって話だから…お前の中でこの事の“善し悪し”をつけられたくないんだ」

「…わかりましたッそのかわり、一杯痛くしていいのです、ぎゅうって押しつけてください。ごめんなさい…ごめんなさいウィル。こんなことしか出来なくて…ごめんなさい」

「いいんだよ。俺のプライドなんてお前の目的に比べたら微々たるものなんだ。機会があれば…お前にもちゃんと話す。でも今回だけは…許してくれ」


ローズの小さな耳を塞ぐと、くすぐったそうに身を捩じる。

聞こえていない事を確認するように耳元で囁いた言葉は、自分でも驚くほど甘く響いた。

ふと我に返ると、ローズの耳を押さえる手に力が籠っている事を知り力を緩める。

口について出てしまった言葉は…ローズへの簸た隠しにしていた俺の本心だった。

シャーナス将軍が頬を綻ばせる前に、少しだけ昔の…妹との出会いを話し始めた。

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