独:Der Alte würfelt nicht.

 
『茶番はいい。早く前回の続きを見せろ』

〔せっかちな男性は嫌われてしまうのよぉお…って、んん?随分と緩いところにアクセスするのねぇッ!こんなんじゃ深層心理になんてたどり着けないんだからッ!〕

『深層心理…って何のことなの?えぇ、これって夢よね…!?』

≪ここはパンドラ内の君の記憶が格納されている場所。彼は君の深層心理、最も深い場所にある忘れ物をしていてね。その為に危険を冒してまでこの場に来ている≫


余りに非現実染みた発言にクラクラするが、以前カノン君に同じようなことをいわれた気がする。

その時は下手に取り合わず、ルカの納品が間に合わなかったりと詳しく話を聞かなかった記憶がある。

我ながら判断誤りだったと反省し、今まで彼らが発言した情報を整理し関連付けた。

何時もの数倍、脳の回転が速く、自分でも驚くぐらいの短いスピードで答えを導き出せた。


――嗚呼、なるほど。伝達距離がほぼ無いに等しいから処理が早いのね。完全に脳での思考は停止されているから、パンドラ内での処理だけになる。変な感じね。


≪では行こうッ!今度の世界は傷みも、苦しみも何一つ存在しない優しい世界!≫

〔大切なお友達とお茶会をして、たくさんの季節を過ごした場所。さぁ私たちに見せてッ!常温で脳がどろどろに溶けちゃいそうな、甘ったるい毎日をッ!〕

『え、あ…ぎゃっ!!体からなんか出てきたッ!』

『私を振り落とさないように気をつけてくれよ、アリス』


クローバーの2のトランプがマジックの様に私のポケットから飛び出て、ヘリオドールの手に収まった。

絵柄の何も無いトランプと、クローバーの2を混ぜ合わせ、扇形に広げる。

くるりとターンを華麗に決めた後、部屋中にトランプを余すところ無く撒き散らした。

白いトランプは落ちる場所によって色を変え、私達もその光景に意識を引き込まれていった。


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