独:Der Alte würfelt nicht.
「――なら、本題に入ろうか。適当に質問して、答えてあげる。バケットを切り分けるから、ジャムとハム…チーズもあるよ?ガーリックに…あと…何がいい?」
「マーマレードでお願い。貴方の名前をフルネームで教えて。あと配偶者も」
「…カノン・ハーグリーヴス。綴りは必要?」
「いいえ、結構。貴方、本当にハーグリーヴス家の関係者なのね。ここに来るまでに少し貴方の事は調べさせてもらったけど…どうやってもぐりこんだのかしら」
ハーグリーヴス家と言えば、政治の世界に糸を張っていると言われている。
トランプで表すならば、スペードの位置に処し…次に並ぶストークス家の抑止をしていると聞いた事がある。
ストークス家とは軍の総指揮者を排出し、幹部にまで根を張っている銘家だ。
スペードの次の強さであるハートだとすれば、その次のダイヤは――。
「君だって。ブランシュ家の人間だろ?僕とは違うけれど最高の教育を受けた後、ブランシュ家の養子として正式に迎え入れられたはずだ。そしてここでの僕らの出会い。まるで運命を感じないかい?」
「残念ならが。私は確かにブランシュの姓を名乗る事を許されているけれど、名前だけ。ブランシュ家に飾るために用意された、ただの宝石の一つというだけよ。これでも自称元天才科学者だから」
「でも君は、序列第4位のクローバーのシャーナス家と手を組もうとしてる。それは立派な謀反なんじゃないのかい?正気の沙汰とは思えないな」
「もうブランシュ家に切られる寸前なんだもの。足元が崩れ落ちると分かっていて、次の岩に飛び乗らない何て自殺願望者か愚か者のどちらかよ」
ブランシュ家はハーグリーヴス家とストークス家の均衡を保ち、両家の抗争を未然に防ぐために暗躍している。
その為両家に潰されることも無く、序列第3位という名家に収まっているのだ。
3番目の強さを持つダイヤをブランシュ家とすると、その次のクローバーは…レイのシャーナス家だ。
シャーナス家はごく最近勢力を拡大し、ハーグリーヴス家とある“同盟”を組んだ事によってこの繁栄がなし得たともいえる。