独:Der Alte würfelt nicht.
 
  
『はじめまして、眠りネズミといいます!黙って入ってきてごめんなさいなのです。でも、素敵な世界なのですね』

『ね、…眠りネズミ?こ、ここには入ってこられないはずだよッも、もももしかして…ウィルスプログラム!?』

『ウィルスというかハッキングというか…。でも、データを弄ったりとかしないのですよッ!わ、わわわ、追い出さないのでくださいッ!!』

『セキュリティー起動ッ!!対象を今すぐに削除ッ!!追い出してーッ!!!』


突然現れた彼女を排除しようと、ありったけのセキュリティーを展開させる。

新芽を出した草木、花を裂くほどの風を巻き上げて彼女を襲わせた。

感情のあまりに多くのプログラムを動かしてしまったため、私の構築した世界にひびが入った。

修正とデータ処理のための解析を始めていると、両腕を後ろから雁字搦めにされる。


『お、落ち着くのですッ!何もしませんッ!皆でお茶をしましょう、白兎と、ハートのジャックと、眠りネズミでッ』

『お、お茶…?どういうことなの…ッ』

『ハートのジャックが場所を用意してくれているのです。一人じゃつまらないのですよ、一緒に行きましょうッ!』

『え、ちょっ…ちょっとぉおっ!!』


目の前にゲートが表示され、手を引く“眠りネズミ”と一緒にゲートを潜った。

美しく茂っていた葉っぱがハラハラと落ち、私の所では春だったのに、夏が訪れず、春から秋へと季節が変わる。

太陽に愛されて茂っていた葉は、部分で見せ方の違う紅葉で目を楽しませてくれた。

目の前に広がるのは、木材でできた不格好で温かみのある手作りのティーテーブル。

それにシルクのクロスをかけながら悪態を付く一人の少年がいた。
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