独:Der Alte würfelt nicht.
「ピンクだと甘すぎるからなぁ…。ブラウン系かオレンジでまとめるのも悪くないか。しかしそれだとハットの色と合わないから色違いで一着だな。あとは――」
「ウィルが着るのですか?それにしてもサイズが小さいのです」
「着るか。お前のだよ。当分の間、預かる事になったからな。衣類品とか日用品が足りないんだよ。あと――すみません、ちょっといいですか?」
「あ、はい。何でしょうか?」
「体のサイズを測ってやってくれないか。それとインナーを少し多めに用意してくれ。あと商品は全て郵送で頼む。支払いはクレジットで」
突然話しかけられた店員が、商品を他の店員に渡してにこやかな笑顔で返事をした。
耳打ちをして用件を伝えると、軽く会釈をしてローズを連れていく。
俺はそれを見届けると、ハンガーにかけてあるワンピースを数点手に取った。
レース編みを施したポンチョは数日ほどで完成するので、それに見合った服を選ぶ。
「お。新しいエナメルのシューズが出てるじゃないか。リボンと花のコサージュが取り外し出来るのか…凄いな。しかも今なら靴とお揃いのチャームも付いてくるのか。しかも限定色…」
「嫌ぁあッうあぁああッ!!ふあッやぁあああッ!!ぎゃぁあ゛あ゛あ゛!!!」
「ちょっ…お客様!店内はお静かにして貰わないと困ります!」
「うあッあああッふえッ…う、うううッああッ!!嫌ぁああぁッああッ!!」
鼓膜を破るほどの金切り声が店の中に響き、俺以外の客も声の方を凝視した。
喉が潰れてしまうほどの甲高い声は店の奥から聞こえ、そこはローズがサイズを測りに行った場所だ。
嫌な予感がして持っていた靴をほかの店員に預け、声のした試着室まで大急ぎで向かった。
試着室のカーテンを開けるのは戸惑ったが、それどころではないと思い勢い良く開ける。