独:Der Alte würfelt nicht.
 
 
「スペードの意味する剣。それを用いて民を守るハーグリーヴス家。ハートは聖杯を意味し軍を率いるストークス家。ダイヤの意味する財産、富を表すブランシュ家は国の財政管理をいっぺんに任されている。そして、クローバーは…これだ。幸運の四つ葉のクローバー可愛いだろう?」

「…四つ葉のクローバーなんてただの遺伝子異常よ。珍しいけれど重宝するものでもないわ」

「夢がないなぁ…。クローバーは本来棍棒の意味を持っていたけど、それを捨てて最近は三つ葉になってるトランプが多いね。だからシャーナス家はきっと、世界平和でも目指してるんじゃないのかな?」

「――ちょっ…と!何してッ」

「うん。素敵なうぶな反応ありがとう。ついでにご馳走様。その四つ葉のお礼に膝枕をもらうから。あんまり動くと脱がせちゃうぞ~?」


私の膝に寝転び、くるくると指先で四つ葉のクローバーをまわすカノン。

あくまで私の質問には答えたく無いらしく、どこか冗談めいた反応を返していた。

なんだか私だけ必死で、余裕が無いのがカッコ悪くすら思えてくる。

空は晴れていて、見上げて体を横たえてしまえばきっと気持ちのいい夢が見られる。


「――貴方は、本当に…何なのよ」

「うーん。あえて言うなら…」


体を起き上がらせて、彼の唇が私の耳朶に触れた。

ゾッとするほど卑猥な言葉を浴びせられて、体をそらそうとしたら彼と目が合う。

こんなに晴れているのに、大きく開いた瞳孔はまるで私の全てを見透かすようだった。

緊張の所為か喉がカラカラに乾き、少しでも潤すために唾液を飲む。

私の言葉を一字一句逃さないというように、私から一度も視線を外さず返答を待っている。





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