独:Der Alte würfelt nicht.
 
 
「えぇと、たしか…ッこの中に証拠があった筈ッ!!」


犯行声明があった際、何かの役に立つだろうとアナウンスを録音していた事を思い出す。

個室に隠していたノート型端末をカノン君が回収していてくれたらしく、学園まで取りに行かずに済んだ。

録音した音声を自動で解析し、警察に情報を送るように設定していたのに…途中でバッテリーが切れてしまったらしい。

解析結果を画面内に表示させ、加工されたツールと情報内容が適合するように条件を設定した。


「…ちょ、っと…これって…ッえ…?」


フリーツールでも無く、既製品のソフトでもない事が分かった。

フリーソフトをオリジナル品として組み直した、パラレルパラソル内で使用していた音声ツールに適合してしまう。

悪用されたのだ、と思いたかった。

私の中でバラバラになっていたパズルのピースがはめ込まれ、徐々に絵柄を見せ始める。


「…シオンに、会いに行かないと。ルカを…助けなきゃッ…!」


テレビ画面に映し出されているのは、ボロボロと涙を流して容疑を否認するルカの姿。

汚い言葉で彼女を批判し、未だに罪を認めないのかと責めるマスコミ。

余りに悲惨な姿に耐えられず、仮パスポートを引っ手繰り、弾かれたように使用人室を飛び出した。

スカートが乱れるのも構わず、三角巾を抑えながら“ストークス本家”へと足を向けた。
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