独:Der Alte würfelt nicht.
 
 
「毎回毎回、面倒なセキュリティ…。あのロリコン社長がしそうなことだわ…」


手の甲に浮かぶバーコードを恨めしく睨みながらも、エレベーターは前と同じように華奢な音を立てて上へ上へと上がっていく。

重力制御装置による基盤があり、それによって過去に確立されていた建設基準をはるかに上回るビルも目立つようになってきた。

そういえば馬鹿な建築家が重力装置無しに建築して、かなりの被害が出たってニュースあったけど、ここまでくると技術革新の怠慢よね…。

リンッというベルの音に、目的地の付いたことを教えてくれる。

だがここはプライベートルームではない。

今乗ってきたのは社長室直通のもの。

ここからは一般社員専用に乗り換えてプライベートルームまで行かなければならない。

面倒だと思いながら、プライベートルームに到着する。


コンコンコン。

扉を叩くと返事が返って、重たい扉を両手で開く。

座り心地のよさそうな光沢のある黒のソファー。

照明は明るく、部屋だけではなく雰囲気まで明るくしてくれそうなほどだ。

統一された家具には几帳面な性格が表れている。

部屋に漂うダージリンの香りは、私が来る事を気にして用意してくれたものだろうか。

そんな自惚れたことを考えていると、時期シャーナス家当主の貫禄を微塵にも感じさせないレイが、ソファーに横たえてた上半身を起き上がらせて私を見る。

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