独:Der Alte würfelt nicht.
「危ないだろ、ローズ落ちつくんだ。君は…アリス・ブランシュだよな?」
「…随分と有名人になったものね。そうよ、私がアリス・ブランシュ。熱烈な歓迎ありがとう」
「アリス、アリス!ローズはずっとアリスに会いたかったのです!」
「えぇと…眠りネズミよね、貴女。久しぶり…元気だった?」
「はいっ!ローズの事はローズって呼んでください!」
花が咲いた様な可愛らしい笑顔は、私の記憶に追加された物と一致する。
黒羊を作成するに当たってオリジナルと呼ばれた彼女は、私をお茶会に誘った張本人。
高度な処理能力を誇り、私の精神世界にハッキングして他の3つの世界と意識を共有した。
現実の世界で会うのは初めてだが、当時から何も変わらない彼女に心から安心する。
「俺はウィリアム・ストークス。現在自宅でローズを保護している」
「あらミドルネームは略しているの?それとも本当に本家筋の人なのかしら」
「正真正銘のストークス本家の実子だよ。訳あってお家騒動からはドロンしてる。俺の事は好きに呼んでくれ。君にまさかこんな所で会えるとは思っていなかったよ」
「私もストークス本家筋の方と面識が持てて光栄だわ。よかったら貴方の顔を利かせてストーク本家にお招き願いたいのだけれど…初対面なのに図々しいかしら」
ペロリと舌を出して子供ぶって見せるが、双方とも出方を見て視線を交差させる。
相手の出方を見るには十分すぎる時間が経ち、耐えられなくなったローズが声を上げた。
ウィリアムに駆け寄り着物の袖を引っ張るローズは、何でも私に加勢してくれるらしい。
女子二名の勢いに負けたウィリアムは店員を呼び付け、何やら細かく指示を出していた。