独:Der Alte würfelt nicht.
「はにかみにうさこみみシリーズ…。名前さえ出回ってないのに。リメイクして欲しいって要望が多いのは確かだけどぉ」
「箱の保守点検をした際にね。転がってないかと探していたら…見つけたわよ致命的なバグ。パンドラボックスがアップロードされるのに合わせて、アバターの機能も新装される時に消滅しちゃう」
「……いち高校生が、パンドラボックスの保守点検?しかも運営側に内情知られたくなくてその期間だけはアカウントを削除してたはずなのに。どこから…」
「使用者の履歴で辿って行ったの。それに更新プログラムを当てた際に、不具合が生じないようにバックアップデータは保管済みだったから。そこから…ちょちょっとね」
大学の研究グループに入っていた時、パンドラボックス…仮想都市の構築に携わった。
今では世界中に普及し、個人が所持するIDを元にアバターを作成することが出来るように設計した。
私が設計する以前にも似たようなシステムがあったが、一般人がIDを介して仮想都市内をアバターで行き来することはできなかった。
しかもそのシステムが公になり、アタックをかける人間が続出したこともあってセキュリティ強化の為の再構築だった。
そして生まれたパンドラ屈指のコミュニティシステム“パンドラの箱”。
だが構築して数年後、私の権限を悪用した大学の研究員の一人が“パンドラのシステム”をクラッキングし一部を停止させてしまった。
「あの噂…本当だったんだ。すご…てか、人じゃない。その年で…アレを作ったって。しかもあれだけの事起こしておいて…いまだに保守点検頼まれてるんだ…」
「技術開発やメンテナンスは、ね。未だに私も呼ばれるのよ。不具合でも起こったら…何が起こるか分からないし。それが名前も顔も出されなかった本当の理由。パンドラのシステムを落とした人間が保守点検に関ってるなんて知られると問題だからね。権限もまだあるのよ?」
「たしかに。パンドラのシステムの一部を落とした張本人が未だにパンドラの箱のメンテナンスやってるなんて。開発者本人がやる分には私も賛成だけど、システム利用するだけの一般人なら反対かもね…」
「そういうこと。…そろそろ後任を作らないと、とは思うのだけれど。中々…ね」