独:Der Alte würfelt nicht.
「後任なんて、誰か出来る人いるの?あれ構築した人、色々おかしいとは思ってたけど…」
「まぁ。後任以前にいつブランシュから切られるか分からないから。後任なんてすぐ見つかって、私なんて明日にでもばいばいかもしれないから」
「うーん。それはないな。ブランシュはまだ貴方を切らないから」
「…それって、どういう――」
「ないしょ。ルカ、行こう。交渉は成立!込み入った話はまた明日ッさよならアリスっ!」
投げキッスをしてルカの腕を引くシオンの言葉に、私は様々な憶測を並べてしまう。
ブランシュ家はトランプで言えばダイヤの位置に処し、財界に拠点を置いている。
スペードの地位に位置するハーグリーヴス家と、ハートに位置するストークスを牽制する役割を担うことも少なくない。
一番立場が危うく、身内間の派閥争いなどで崩れてしまうバランスだ。
どんな綻びがあるか分からない状態で、私みたいな危険な存在を飼いならしている事自体不自然だ。
――シオンって子…何者なの。何故あそこまで言い切れるのかしら…?
どんな理由かはいまだに見当がつかないが、きっと今後の私の動きに関係してくる。
出来るだけ早い段階に、何かしらの情報を得ないといけない。
黒羊に、ハーグリーヴス家、ブランシュ家に…そう言えばレイもクローバーの位置に処する家柄の跡取りだった。
国の第4勢力が顔を出し、黒羊に何かしらの関連性をみせている。
――水面下の部分で、色々と動いてるんでしょうね…。
レイもそれに何かしらの関係があり、私を利用するために傍に置いているのなら理解できる。
そもそも彼が、同情という意味合いで私を飼いならしているはずはないのだから。
近々、ストークス家についても調べを入れようと心に決めて、今だけは彼との久しい再会で胸を躍らせておく事にした。