独:Der Alte würfelt nicht.
 
 
「フェアリーシリーズね。エンジェルシリーズを基盤として作成されているみたいだけれど…性能は遥かに上がってる…。以前のは公式配信のペットアイテムとグラフィックだけ弄ってただけなのに。ルカ…凄いわね、これ」

「ふふーん。今回はペットフードもバリエーション豊富だし、フードの種類によって隠しプログラムが出現するように設定したのォ。組み合わせとタイミングの他に性格とかも反映されるようにね。将来的に戦闘モーションも組み込んで、ペット同士の熱いバトルも――」

「ルカ、暑苦しい。動かしてみせるよ。目覚めるモーションは私が担当したの。とりあえずそれだけ見て感想聞かせて」

「えぇ~シオンッ!私だって頑張ったのにぃッ!飛び回るのとか、もうため息が出ちゃうぐらい素敵なんだからっ!」


テキスト形式で表示されたソースは色分けされ、細かくコメントが書き込まれていた。

慣れた様子でコードを書き込み、プログラムを実行した。

画面上で停止していた妖精は一旦消え、代わりにチューリップを象ったグラフィックが表示される。

レモン色の花弁が綻び、体を大きく反らして背伸びをする小さな妖精。

透明に近い琥珀の羽根を広げ、その体を宙へと浮かばせる。


『こ、んにちわ、ますたー。わたしのな、まえ、はフェアリーシリーズPE型のピリアと、もう、します。なんでも、おも、うしつけ、くださいっ!」

「う、わ…起動モーションだけで相当力入れてるわね…。音声認識プログラムは少し直しがいるとしても…よくここまで。これ配信対象はあるの?」

「年会費36万のダイアモンドクラス限定。パンドラ内での通貨で取引するから、一体10万ポイントでダウンロードできるの。1ポイント1円だから一体10万円ね?」

「…うわ。すごいわ、お金持ちって。無機物にそこまでお金を掛けられるわね。それでも予約が2カ月先になるほど儲けているのなら…本当に雇って貰おうかしら」




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