独:Der Alte würfelt nicht.
≪彼女の名前はヘリオドール。僕の妹なんだ。僕らは双子、双子はお喋りをするのが仕事。えーっと、それから…何の話をしていたっけ。えぇと…≫
〔お兄様はお喋りが下手ですっくきゃきゃ!ゴシュナイトお兄様とは双子ですの。双子はお喋りをしてゼリービーンズの当てっこをするのがお仕事なのですっ。お兄様は“頭が弱い”のです、だから“妹”がお話しますわッ〕
≪ドール、ヘリオドール!君は賢いから君がいないと僕は一体どうしたらいいか分からなくなる!お喋りをしよう、忘れないように、大切な記憶が消えてしまわないようにッ≫
〔えぇお兄様。妹はお兄様とお話をして暇つぶしをするのが大好きなのですの!くきゃきゃッ楽しい、楽しい楽しい!たぁああ゛のしぃいい゛ッ!!!〕
ゴシュナイトと呼ばれた少年は、マーガレッドを象った円形のヘッドドレスを頭に付け、少年なのに女の子のような格好をしていた。
きっとヘリオドールという少女が、何とか兄を言いくるめてこんな格好をさせているのだろう。
レイが少女たちといった理由も理解できるが、こんな夢の世界では性別なんてあってないようなものだろう。
オレンジとグリーンのお揃いのかぼちゃパンツに、短い丈の上着。
水玉のタイツを履き、可愛らしい双子はくるりと華麗にターンを決めてお辞儀をする。
〔今日はどういった趣向をお求めですの?モルガまでお連れになって、あの扉にもう一度入ろうとでも申しますの?くきゃきゃっ〕
≪あの扉?あの扉ってなんの扉?ここにはたくさん扉があるから僕にはどれがどれだかわからない。でも、禁断の開かずの扉なら知っている、あそこは開けてはいけない。開かずの扉だ、開けたらきっと災いが飛び出すよッ!≫
『レイ、モルガって私の事を言っているの?それに扉って…』
『この子らは君の“アリス”という名前が嫌いらしい。だから勝手にモルガ…いやモルガナイトと呼んでいるだけだ。下手に追及すると精神がやられるから気をつけなさい』