独:Der Alte würfelt nicht.
『痛ッ…いああッ痛い、痛い痛い痛いッ!!うぁああッい、…い゛いだァア!!い゛い゛だあ゛いぃい゛!!!や、やッああ゛やめ、や…うあぁあッ!!!』
≪…ッドール、ヘリオドール…優しくしてよッ…僕も痛い。ははは、うぁあッ痛いッ!ははッ!!ひひゃひゃッ!!ああ゛ッうあ、あ…!≫
〔くひゃひゃっお兄様、男の子は泣いてはいけませんのッ!しかも出てきたのはただのハートの5。でもこれも一つ、モルガナイトを構成する成分。痛いのは、モルガの所為なのですわ。さァスペードの部屋を開けましょう!お兄様も、ほら、二人で。双子はいつも一緒なのですわ!〕
体の中心を割り開いて、左手を粘着質な赤い液体から引き抜く。
ヘリオドールの指の隙間には、先ほど彼女が話した“スペードの5”のトランプが挟まれていた。
それにはべっとりとラズベリージャムの様な赤黒い色が塗りたくられ、もはや数字も擦れて見えないほどだった。
私は、それに“見覚え”があった。
いや、その意味に、見覚えがある。
〔さぁ扉を開きましょう。まずはスペードの部屋から。スペードは彼女にとって“痛み”の場所。この世界はきっと涙で海になり、何度も溺れてしまう。でも平気、私たちは双子。服が濡れても何度だって乾かせばいいもの!〕
≪ドール、ヘリオドール!扉を開けよう、扉を開ける事はお菓子の次に大切なことなのだから!
この世界の根源は“愛”故に。だから愛の為なら僕らは扉を開こう。その身が千切れて雨風にさらされようとも、愛故に。愛しているよ、ヘリオドール。≫
〔えぇお兄様。“妹”もお兄様を愛しております。お兄様の為ならばどんな痛みでも堪えましょう、しかしお兄様に危害を加えるものは断じて許しません。未来永劫、それは変わりませんわ〕
≪僕らは永遠だ。だから愛を語れる。永遠を知らない、気付かないモノは愛を語ってはいけない。さぁ開こう、スペードの扉を。何千もの剣でその身が串刺しにされようとも、その愛が本物ならばきっと心臓は貫かない≫