独:Der Alte würfelt nicht.
「もしも…そうだったら。どうするんだい?」
彼の手が止まって、ボートが湖の中心で緩やかに減速した。
とても長い時間に感じるのが不思議。
私の髪についた花びらを彼が指先で取ってくれる。
その花びらを手のひらに乗せて、軽く息を吹きかけると指先を伝って舞いあがった。
くるくると回りながら踊り、水面に浮かぶ花びらと同じ運命をたどるだろう。
それでも尚、風と踊るのは…まるで今の私だ。
「…とても残念だわ」
花の香りに惑わされて、口から出る言葉。
運命から逃れられないと分かりながら、風と共に踊る花びらのような私。
いずれは水面に落ちて、終わりもしない旅路の中を進む。
いつかは水に飲み込まれてしまうのを知りながら、たゆたいつつ空を眺める。
それも別に悪くないと、笑ってしまった。