独:Der Alte würfelt nicht.
――甘やかな香りが漂うカフェテラス。
ちらほらと椅子に座る生徒は授業が終わり、おしゃべりに花を咲かせている。
納品の件はどうにかなり、ルカに3時間の説教を食らった後は寝ずの作業。
シオンの応援もあり、何とか完成し友情のひびが入りかけたのをどうにか食い止めた。
「ねぇシオン、まぁだ?」
「ん、・・・あと5行ッ!」
「ウソォ!頑張れ頑張れ~」
いつもは暖かい紅茶を飲むけれど、今日ばかりは学園の特製ブレンドアイスティーで喉を潤していた。
先ほどまで目の前に置かれていたケーキは、あと一口で跡形も無くなってしまう。
そっとフォークをいれ、口に運んだ。
柑橘系の甘酸っぱい舌触りと、クリームのとろける触感。
ふわふわのスポンジが口の中を満たしてくれる。
そのとき、ノート型端末から顔を上げて、やり遂げた、という表情を浮かべるシオンが見えた。
「うーんッ・・・終わったぁあッ!」
「お疲れさまァ、シオン」
「ヒトの課題写して何を言う・・・」
「いいの、いいのッ!結局は同じ答えが出てくるんだし、アリスちゃん問題ナーシです」
自分で解かなきゃ意味ないだろ。と思ったが、言葉ごとアイスティーで喉に押し戻す。
折角の楽しい時間なので、そんな先生みたいな事は無しだ。
「本当ッアリスありがと!助かったよぉ・・・!」
「どういたしまして、シオン」
「ねぇねぇ、これからどこか行くぅ?」
「んーー・・・私パスだな。まだアリスの課題写し終わってないし、・・・修正もしなきゃ」
「ルカごめん。私も駄目。早く帰って来いって言われてるから」
私とシオンに断られたルカは腑に落ちないように頬を膨らませた。
テーブルに顎を載せて、不機嫌だ、と意思表示をする。