割り切りの恋人たち【前編】
 「おっさんになったな」
「おめぇーだって、おばちゃんになったじゃねぇーかよ」
「誰だっておばちゃんになるんだよ!」
 と弘美はそう言いながら、俺の右足の太ももに軽く左足で蹴りを入れてきた。
「いでぇー! 骨折が折れたぁー」
 俺はそうおどけてみせた。
 すると弘美は手を叩きながら爆笑していた。
 あの頃と何も変わらないふたりが、そこにいた。
< 10 / 36 >

この作品をシェア

pagetop