割り切りの恋人たち【前編】
 駅前のラブホテルに向かう。
 弘美は俺の左側を歩く。
 弘美はいつも俺の左側を歩いていた。
 髪をかきあげる仕草、俺の歩調に合わせてくれるやさしさ、そしてトーンの低い声。
 何もかもがあの頃のままだった。
 道中はあの頃の恋人気分そのままだった。
 あの頃、この道を歩いた記憶がある。
 俺も弘美もまだ高校生だった。
 明日に明るい希望を抱いていた毎日だった。
 そして毎日が楽しく充実していた。
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