割り切りの恋人たち【前編】
 18年ぶりの再会。
 あの当時はまだ自動改札ではなかった。
 俺はいつもこの駅の改札で弘美と別れていた。
 弘美はブレザーの学生服にポニーテールをしていた。
 俺はポニーテールが大好きだった。
 だから弘美のポニーテールに惚れていた。
 いつもこの改札の前で口づけを交わしお互いに別れていた。
 弘美は改札で駅員さんに定期をみせて中に入る。そしてくるりと反転して、「じゃあね」といいながら、人の波に逆らうことなく、足早に電車に飛び乗る。
 俺は弘美が無事に電車に乗り込むのを確認し、その場を後にしていた。
< 6 / 36 >

この作品をシェア

pagetop