割り切りの恋人たち【後編】
 弘美は俺の左側を歩いている。
 歩調も同じ。
 交差点に差し掛かる。
 平日の昼間だが、人の波が押し寄せてくる。
 ふたりはなんとか前から来る人々を交わし、横断歩道を渡りきる。
 社会に出てから何一ついいことなかった俺だけど、社会に出てからはじめて、心の底から楽しいと思える出来事に遭遇した。
 たとえそれが割り切りであったとしてもだ。
< 20 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop