割り切りの恋人たち【後編】
 駅の改札に向かう駅ビル内のコンクリートの階段をふたりで肩を並べて昇っていく。
「そう言えば、昔もこうして一緒に昇ったよね。この階段」
「ああ昇った」
 俺は今、弘美と同じことを考えていた。
 意思までもが通じ合っている。
 まったくあの時と同じだった。
 この階段だけは当時の面影を残していた。
 昭和の雰囲気が残る、この階段。
 駅ビルと隣接しているが、駅ビルは変わっても、ここはまったく変わっていない。
 薄暗いのもあの頃のままだ。
 そして券売機の前に到着した。
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