MEMORY~A Promise with them~
 

「き、さ…ちゃん?
えっ… な、何で?」


あたしと目があった千葉さんは最初、驚いた顔をすると直ぐにオロオロと焦りだした。

そんな千葉さんに小田原先生は視線をあたしの方へと向け、目を丸くする。


「な、仲岡先生?! どうして泣いてんですか!!?」


「えっ…?」


よっぽど意外だったのか声が裏返っている小田原先生の言葉を聞き、目元を触ってみると生暖かい液体が流れていた。

言われて気付いた。



〝何でもないです〟
そう言おうとしたが、声を出したら気付かれるんじゃないかと思い、そのまま言葉を飲み込んだ。


「…稀莎?」


その言葉に思わずビクリと肩を揺らしてしまう。

背中越しだけどヒシヒシと伝わる。この困惑している空気――


誰一人として口を開かない。
皆、あたしの言葉を待ってるんだ。


何か言わなきゃと口を開きかけたとき、後ろから肩を掴まれ引っ張られる。

不意打ちのせいで抵抗する間もなく後ろを振り向いてしまった。


「っ! 稀莎!!!」



瞳(め)と瞳が合った瞬間、一気に懐かしさが込み上げてくる。





ちょっとクセのある栗色の髪

甘く優しく名前を呼ぶ低い声

少し陽に焼けた精悍な顔



全部…
全部あの頃のまま…

見間違える訳
間違える訳ないっ…!






     〝―――――陸″


 
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