愛なんかいらない 〜キュート過ぎる部下〜
「ほおー、奴の名前は“祐樹”だっけな?」


しまった……


「祐樹坊ちゃんは知ってるのかな? 俺と君の関係を……」


「………」


「知らんだろうな。温室育ちのお坊ちゃんが、不倫して妊娠までした女を許すはずないよな? たとえ本人が許しても、社長の父親や母親はどう思うかな? 可愛い長男の嫁が、そんな女と知ったら……」


「………」


「そんな目で見るな。俺さえ黙ってりゃ、ばれやしないって。ただし……」


「な、何ですか?」


「時々、付き合ってくれりゃいい。晩飯を食ったりな」


「………」


「前にも言ったが、妻が相手してくれなくてな」


阿部は机から下りると、無言の私の腕を掴んだ。


「さあ、飯を食いに行こう? おまえの好きな、シーフードのフルコースを食わしてやるよ」


私は阿部に引かれるままに、立ち上がっていた。頭の中は、真っ白だった。


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