愛なんかいらない 〜キュート過ぎる部下〜
会社を出ると、阿部は路上で客待ちをしていたタクシーに私を乗せ、素早く自分も乗り込んだ。


阿部は運転手さんに行き先を告げたようだけど、私には聞こえなかった。


私、何やってんだろう……


無言で、車外を流れる街の明かりを見るともなく見ている内に、タクシーは目的地に着いたらしい。


阿部に手を引かれてタクシーから降りると、そこは見慣れたビルの前だった。


それは、かつて何度も阿部と来ていた、シティホテル……


「食事に行くはずでは……?」


「時間が惜しいから、ルームサービスを頼む事にしたよ。さあ……」


私は阿部に肩を掴まれ、強引に歩かされながらホテルへ入って行った。


フロントの近くまで行ったところで、私はハッとして阿部の手を振りほどいた。


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