愛なんかいらない 〜キュート過ぎる部下〜
「もう帰っちゃうの? 志穂ちゃんに会いたくて、急いで帰って来たのに……」


拗ねたような表情のアリサさんの綺麗な顔を見たら、それに祐樹が拗ねて“チェッ”と舌打ちする時の顔がオーバーラップし、それまで堪えていた涙が、堰を切ったように溢れ出してしまった。


「志穂ちゃん……?」


「ごめんなさい」


私はそれだけを言うと、アリサさんに背を向け走り出した。


背後で車のドアが閉まる音がしたけど、私は構わず門へ向かって走った。


しかし門に着いたものの、頑丈な鉄格子に行く手を阻まれてしまった。

冷静に考えれば、人用の出入口があったはずだけど、パニックになっていた私は、鉄格子を両手で掴み、ガシャガシャとやみくもに押したり引いたりしていた。


「志穂ちゃん、やめて!」


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