お嬢様の秘密
「葵様。もうお時間です。」


「あぁ分かった。」


あれ?


吉崎さんって葵って呼んでたかな?


まぁいいや、そんなこと。


「お前支度終わったのか?少し髪とか直してもらったら?」


「そうする…。」


私がそう言ったとたん、葵が近くにあったドアを開けた。


「ここ楽屋みたいなとこ。あと30分あるから好きに使ってな。」


「葵はどこにいるの?」


「俺?ここだけど?」


「葵は自分の部屋に行かないの?」


「あぁ。ペアで1つだから。」


そう言ってソファに座ってくつろいでいた。


今気づいたけど、今の葵は見るからに高そうなスーツ。


葵に似合っててカッコいい....。


「なに見てんだよ?」


「え....?何も見てないよ?」


「嘘だろ?お前とずっと目が合うわけねぇだろ?」


私、目を合わせた覚えはないんだけどな…。


「えっと....いつもの葵よりカッコいいな....って。それが何?」


小さい声でボソボソと呟いた。


どうして素直に言えないんだろう....。


でもこれだけしか言ってないのにめっちゃ恥ずかしい...。


不思議と葵は少し顔が赤くなっていた。


どうしたんだろう?


この部屋結構空調効きすぎてむしろ寒いんだけどな....。


「準備出来たのか?」


もしかしてごまかし?


意外かも。


女の子達に言われなれてると思ったのに....。


なんか胸がさっきよりドキドキしてる...。


「ユリ?」


「あ....えっと...もうできたよ。確認しただけで大丈夫だったから。」


―コンコン


「じゃあ行くか。」


「うん!」


「ユリ。」


改めて私の名前を呼ぶと、葵が片膝を少し折り手を出した。


私は微笑みながら葵の手を握った。


「じゃあ行くか。」


前に行った学園祭のように手を繋ぎ、舞台へ向かった。




そういえばあの会話....。


楽屋にひっそりいた吉崎さんに聞かれてなかったよね?


と、急に心のなかで慌てはじめた私でした。
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