お嬢様の秘密
ーなんだか気持ちが落ち着かない……


「お嬢様?どうなさいましたか?」


「なんだか気持ちが落ち着かなくて………。」


「左様でございますか。ではココアをお持ちいたしましょうか。」


「ホント?ではお願いします。」


小さい頃お母さんによくココアを淹れてもらったものだ。


理央が持ってきてくれたココアを少し香りを楽しんでから一口飲んだ。


「え....?懐かしい.....。」


お母さんの味.....。


「暖まりましたか?」


「何でお母さんの味を知ってるの?」


このココアはほっとする味。


ココアとミルクは3:1という私とお母さんの密かなこだわりの味。


「いつも食べていらっしゃったお料理はもともと私が作っていました。」


は?


「私はお嬢様のことをいつから知っていたとお思いですか?」


「それは私が転入したときでしょ?」


「いいえ。お嬢様のお母様から“妊娠している”とお聞きしたときからでございます。」


「え...?生まれる前から....?」


それと、ココアと何の関係があるんだろう?


「奥様は、家があまり裕福ではないことを信じこませるために家事を頑張っていました。


しかし出来ないものはできないらしく。


話し合った上、お嬢様がいらっしゃらない時に私がこっそり作っていました。


お料理だけではありませんけどね。」


じゃあ私にとって思い出の味は理央の味.....。


「お気づきにならなかったお嬢様はある意味すごいと思われます。でもココアだけは奥様ご自身でお作りしていましたよ。」


確かに....。


自分の鈍感さに苦笑い。

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