お嬢様の秘密
「お母さん。私に報告したいことはこれだけ?」


「ええそうよ。」


「じゃあ私は学園に....「戻らなくてもいいわ。」


「え?」


「荷物なら吉崎が持ってきてくれたわ。」


「吉崎さんが?」


葵の執事じゃないの?


でもありがたいし、あとでちゃんとお礼を言わなくちゃ。


それより....。


「お母さん。夏菜に玲央が留学すること言っていい?」


「うーん.....。まあ夏菜ちゃんならいっか....。」


「というわけで、ちゃんと言いなよ玲央。」


「わかってるって。俺が忘れるわけねぇだろ?」


あれ?


いつの間にかため口?


「あなたって敬語とタメ口の切り替えが急に入るから分かんないわ.....。」


「そういうお前だって....「玲央。言わないで。」


何かを言おうとした玲央の口をお母さんがぴしゃりと止めた。


威力が半端ない.....。








「玲央。早くいきなさい。雷也がお父様のところへ送ってくれるそうよ。車の用意は整っているわ。」


「はい。」


そして私に向き直った。


「じゃあなユリ。俺はちゃんと思いを伝えるから。あのモテる鈍感お嬢様をお前が守れよ。」


「わかってる。」


くるっと後ろを向き、玲央は颯爽と歩いて行ってしまった。






背中が見えなくなったところで私は屋敷をさまよいながら何とか自分の部屋に行った。


前よりまし....。


昔、何も言わずに玲央は半年間行方不明で学校を休んでいたことがあったんだから……。







私はいつの間にか泣いていた.....。


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