お嬢様の秘密
-玲央side-


言わなきゃな....。


「イギリスに少し留学する」っていう少しの言葉がなかなか言えない。


俺らしくねぇよな。


アイツは俺の前では絶対泣かない。


俺は頼られてないってことだろ?


幼なじみなのにな。


情けねぇ。







目立たないように普通の車に乗った俺。


ユリの前では雷也叔父様が送ると言っていたが、兄貴だったのか……。


なんとかごまかしたんだな。


運転席にいた兄貴になんとなく聞いてみたくなった。


「なあ兄貴?」


「なんだよ。急に。」


「兄貴が留学するときもこんな感じだったのか?」


「旦那様の命令でってことか?」


「まあ.....。」


「違う。俺の時は一通り小学6年で大学までのすべての勉強過程を身に付けた後、旦那様に挨拶をしてイギリスに行った。

ちょうど今頃....小学校を卒業した後だったな。」


長男と次男では完全に執事になるためのプロセスが違うんだ....。


俺が物心ついた時から兄貴はずっと机に向かっていた。


親から『邪魔するな』と言われ、ほとんど顔を合わせることなく、もちろん話すことなく....。


いつの間にかこんな歳になっていた。


< 293 / 312 >

この作品をシェア

pagetop