保身に走れ!
数年経てば、人は変わる。
「周防さん福岡どーよ?」
中学時代、下流グループには挨拶さえしない意地悪な性格なのに、
外見が可愛いだけでチヤホヤされていた嫌味な子が、
自然と分け隔てなく穂ノ香のような例にさえ、気さくに世間話をするようになっている。
本当に信じられなかった。
当時はシカトというより存在さえ認識してくれなかった癖に、
今や笑顔で対応してこられては、
一体かつての同級生に、どのような心境の変化があったのだろうと困惑してしまう。
「……え、あ、……あー、観光客多い?、かな。、……。」
「へえ、アタシが福岡行った時は周防さんるぷぷしてね?」
苗字にサン付け、それは確かに冴えない中学の頃には馴染んでいたのだけれど、
転校した先の穂ノ香には、幽霊をごまかしユウちゃんというポップなあだ名が付いていたが、
悲しいことに似合っている自信はあった。
そう、彼女は数年経てど変われなかった垢抜けない人に属する訳だ。
恋をして変身する貴重な数年を、ただただ現状維持に励んでいたのが周防穂ノ香だ。
「ギャハハ!」
「キャハハ!」
一次会でカラオケはナシだと思った。
席が動けないし結局当時の仲良しグループで固まるし、久々の会話よりは歌中心になるし、
なにより嶋が居ないからつまらなかった。
そう、穂ノ香の青春にはあの少年が居なければ始まらない。
数年経てば、親友は変わる。
一番仲良くしていた友達の亜莉紗は、高校デビューをしたらしく、
なんだか言動が変わってしまったため、声をかけづらく、
同窓会での穂ノ香は昔のまま一人ぼっちだった。