保身に走れ!
思春期は意外と子供っぽいと言うよりは幼稚なので、あっさりとした顔立ちからか、
男子は嶋を『オカマちゃん』と呼んでイジっていたが、
恋する乙女アングルでは中性的で白衣が似合いそうな存在だったし、
他の奴みたく騒がず読書ばかりしている彼は短絡に考えると、インテリという響きがぴったりだった。
片思いをした場合、どういう手続きを済ませば晴れて恋人に認定されるのだろうか。
受験生だしお別れだし最後に恋をしたい穂ノ香の浮ついた夢など、三組では叶えられそうもない。
甘い恋愛なんて妄想もできないほど、彼女のクラスは明らかに腐っていた。
黒なのに白く光るピアノの伴奏はただただ一方的に鳴るのみで、
か細い歌声は真面目が取り柄の優等生が成績を気にするから口を動かすも周りが気になるから声量を控えているものだったため、
そんな八人分の葛藤は余計に格好悪かったし、
口パクを続ける残りの生徒も意味不明だった。
だから、青春の一ページとなるイベントに向けてクラス一丸となり気持ちが重なる共演など、無理だと分かりきっていた。