保身に走れ!
泣き寝入りとかなあなあとか、そんな反勢力的な空気もなく、
不愉快なイジりに何も反応が起こらないで当たり前だった。
大人の対応なのかプライドが高い人間による回避策なのか、二つは非常に近しい。
「てかさー真面目に質問! 船場とならシングル無理くね? 落ちるわ」
「確かに! 確実に壊れるわ」
「そもそも金つまれても嫌だけどな?」
「ほんまそれ、船場とか生理的にムリだろ」
下世話な流れなど聞こえないふりをして、聞き耳を立てる心理の矛盾を穂ノ香には上手く説明できそうにもなかった。
どうして誰かを馬鹿にして笑えるのか、どうして相手の気持ちを配慮できないのか、
内心彼らの非情な神経を疑うのに、
不満ばかりを並べるだけで何もしない大人しい彼女だって充分性格に支障がある点には、まだ本人も気づいていない。
喧しい私語をやめないならば、もう音楽室から撤退してほしくてたまらなかった穂ノ香だ。